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金融庁も名指しで警告 外貨建て保険のリスク
近年、老後資金を得るための資産運用として人気が高まりつつある「外貨建て保険」。一方で、その販売手法に、金融庁から名指しで批判があったといいます。なぜ批判が起こっているのか、外貨建て保険の仕組みからリスクまでを解説します。
外貨建て保険とは 人気の理由
「外貨建て保険」とは、契約者が支払った保険料を、保険会社が外貨で運用する商品を言います。保障がメインの掛捨て保険とは違い、将来的に保険金や解約返戻金として資金を手元に戻すことを目的としているため、いわゆる「貯蓄型保険」になります。
外貨建て保険が人気の理由は、その利回りにあります。米国やオーストラリアなどの国債は比較的金利が高いため、日本国債で運用するよりも利回りが高いのです。
それに比べて、円建て保険は、現在の超低金利時代においてメリットが享受できる商品では無くなっています。予定利率の参考となる「標準利率」が、今年の1月に初めて0%に低下するなど、増えない・売れないことから運用難に陥り、撤廃される円建て保険が続出したのです。
販売手法に金融庁が批判 そのリスク
そんな外貨建て保険を金融庁がやり玉に挙げているのには、理由があります。それは、商品そのものにではなく、その販売手法にあるからです。特に問題視されているのが、「元本保証」というウリ文句。支払い金額より受け取り金額の方が多い事を勘違いさせるような営業トークが、外貨建て保険を販売する保険会社の間で蔓延しているのだと言います。
しかし、実は外貨建て保険には特有のリスクがあります。
①外貨で運用されるため、為替差損が生じる
外貨建て保険は、保険料を外貨に換えて運用するものですが、最終的には円に戻す事を前提として商品を購入している場合がほとんど。つまり、2回分の為替手数料が生じます。さらに、円に戻した時に、為替の動向次第では元本割れするリスクがあります。
②手数料が高く、元本割れの期間が長い
下記の図は、とある国内生命保険会社の商品です。
年数 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 比率 |
1年 | 21万1440円 | 1万9000円 | 8.9% |
5年 | 105万7200円 | 77万6000円 | 73.4% |
10年 | 211万4400円 | 182万5000円 | 86.3% |
20年 | 422万8800円 | 414万4000円 | 97.9% |
25年 | 528万6000円 | 553万5000円 | 104.7% |
※米ドル建てを1ドル=100円で円換算。35歳男性が、60歳まで保険料を払い込む、月払い保険料が176.20米ドルで保険金額が100万米ドルの終身保険に加入した場合。
見ると、契約から1年で解約すると、解約返戻金は9%にしかなりません。それどころか、解約返戻金が元本を上回るのに、20年以上もかかることが分かります。上記の図の保険商品には脂肪保険が付いているので、単純に損になることは無いのかもしれませんが、少なくとも「元本保証」と言えない事は確かです。
20年待たなくても、為替レート次第では利益が出る可能性もありますが、為替レートは予想するのが非常に難しいものです。
クレーム多くても金融機関が販売し続ける理由
これらの販売手法の影響か、国民生活センターには外貨建て保険に関する相談が多く寄せられており、それも年々増えていると言います。2019年度には、過去最多となる646件に達したそうです。クレームが増えても、金融庁から批判が上がっても、この外貨建て保険を販売し続ける理由は何でしょうか。
超低金利が続き、預金と貸し出しの利息を収入源とする銀行の利益を圧迫し始めています。さらに、円建て保険を組成することが難しくなる一方で、外貨建て保険は、同額の投資信託に比べて5倍の手数料をもらえるため、儲かる商品として手放す事ができないのだと言います。
金融庁や生命保険会社は、金融機関のそうした販売手法に対して不適切だと判断し、保険会社から銀行などの代理店に支払われる手数料の開示や、販売に使用する資料の整備を進めてきました。
さらに、生命保険協会では、今秋から外貨建て保険専門の販売資格を儲ける方針です。販売する営業員の知識レベルを底上げして、改善に取り組んでいくようです。
しかしながら、事業者にとって「おいしい」商品であることには変わりないため、自主的な改善には一定期間が掛かるうえ、期待しても限界がくるでしょう。そうなると、消費者としては、自分で自分の資産を守るしかありません。