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年金改革、働く高齢者の「自助」後押し。高齢者自身に老後生活委ねるかたちに

政府は先日、年金改革法案を閣議決定しました。内容としては、高齢者の就業を促進するため、75歳から年金を受け取り始めると毎月の年金額が増える仕組みに見直すことにしています。さらに個人型確定拠出年金(イデコ)など私的年金に長く加入できるようにする改革も盛り込みます。
日本経済新聞電子版(2020年3月3日)によりますと、主な改革の開始は下記になります。
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<2022年4月から>
・年金の受給開始年齢を60~75歳に拡大
・働くシニアの厚生年金が減る仕組みの見直し
・国民年金手帳の廃止
・年金を担保にした新規の貸し付けの停止
<2022年10月から>
・101人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金を適用
・20歳以上のすべての会社員が個人型確定拠出年金(イデコ)加入可能に
<2024年10月から>
・51人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金を適用
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特に、今回の決定で重要な内容は主に3つです。
1)受給開始年齢を75歳まで延ばす
現状、60~70歳の間で選ぶ年金の受給開始年齢を「60~75歳」に広げます。受け取り開始年齢を1カ月遅らせるごとに年間の受給額は0.7%増え、75歳まで遅らせると終身で年84%増になります。
2)働く高齢者の年金の一部を減らす「在職老齢年金」の見直し
今は60~64歳で賃金と年金の合計額が月28万円を超すと年金が減る。減額基準を月47万円まで引き上げ、今より長く働けるよう後押しする。
3)厚生年金に加入するハードルの引き下げ
高齢者や女性は短時間勤務も多いので、こういう方にも厚生年金に加入できるよう、加入要件の一つの従業数の基準を見直し、中小企業で働くパートに対象を広げていきます。こうすることで、厚生年金保険料を納める支え手も増やします。
公的年金の受給開始年齢は原則65歳のままです。この年齢から医療や介護も含めた社会保障制度で支えられる側に回ることは変わりません。しかし、年金改革法案ではこの線引きを高齢者自らが乗り越え、さらに年金の”支え手”に回るよう促すものとなっています。
厚生年金に加入しながら長く働けば、個人レベルでは給付水準を大幅に引き上げることができます。75歳まで働いてから年金受給を始めれば、現役世代の収入と同水準の年金を受け取ることが可能と現状では想定しているとのことです。
一方、高齢者が反発するような年金抑制の強化策など、抜本改革は軒並み見送られました。先進国では受給開始年齢を一律で67~68歳に引き上げる国も多い中、日本の年金改革の議論では「60歳代後半以降で、健康状態が悪化する高齢者が一定程度存在する」(厚労省)として、一律引き上げは最初から検討していませんでした。
公的年金は現役世代から高齢世代への仕送り方式をとっています。このままの人口お動態のままでは少子高齢化の影響で給付水準の低下は避けられない状況です。
厚労省が19年夏に公表した公的年金の財政見通し(財政検証)によると、経済が順調に推移しても将来の給付水準は現在より2割弱低下します。
老後に安心して、年金生活という時代ではなく、自助努力をいまからしていかないと老後の生活はままならないかもしれません。