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家計の「黒字率」30%超 自由に使えるお金、消費より貯蓄 昨年度、収入増でも備え優先
家計で貯蓄にお金をまわす傾向が強まっているといいます。総務省が5/10日発表した家計調査によると、収入を消費でなく貯蓄などにあてた割合を示す「黒字率」が2018年度に30%を超えました。働く女性や高齢者の増加で家計収入は増えているとはいえ、将来への備えを優先する世帯が多いようです。
この家計調査によると、1~3月の消費支出は29万2284円(2人以上の世帯の月平均)で、前年同期に比べて実質1.9%増えました。4月下旬から5月上旬の大型連休を控えて、宿泊や航空、鉄道の予約などが増加しました。
ただ消費が盛り上がっているとは言いがたいのです。1~3月の消費支出は10~12月比(季節調整値)でみると実質0.2%減。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「不要不急の支出が抑えられている。消費は弱めとみるべきだ」と指摘しています。
家計の「黒字」の分析からも消費者の慎重な姿が浮かび上がります。黒字は自由に使えるお金を示す「可処分所得」から消費支出を差し引いた値のことです。この黒字を可処分所得で割った黒字率は18年度に30.8%まで上がった。
2人以上の勤労者世帯の実収入は18年度で月56万5271円と前年度に比べ実質0.5%増えました。女性の労働参加が進むなど世帯収入が増加しましたが、消費がその分だけ伸びなければ黒字率は上がります。お金は消費の代わりに貯蓄に向かっているのです。
第一生命経済研究所の星野卓也氏は「高齢者や配偶者の就労が増えているのは、消費よりも将来に備える目的が大きい」と指摘しています。年金・医療などで将来への懸念が強まっており、収入増が消費に結びついていないとみている。
大和総研の神田慶司氏は「社会保険料の負担増が消費の伸び悩みに影響している」と分析。今後も給付が減るとの懸念があり、家計で防衛意識が働きやすいという。
厚生労働省が10日に発表した3月の毎月勤労統計(速報)では、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比で2.5%減少。景気の先行きは米中貿易戦争の影響など不安要素が多いです。今後も賃金の上昇が見込みにくい状況になれば、消費に対して楽観できない傾向が続く可能性があります。
2019/05/11 日経新聞朝刊よりご紹介