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延びる定年後 高まる資金不安
平成の30年間、老後資金の不安はじわじわと右肩上がりに
長くなる定年後の人生と、少しずつ目に見えて減り始めた公的年金、そして超低金利が続く中での運用難。
多くの高齢者が「長く働く」ことを選択するようになりました。
老後不安の影響はいたるところに
2015年、年金や葬儀費用など老後のお金をテーマにした小説「老後の資金がありません」が刊行され、約24万部のロングセラーになっています。
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会専務理事で千葉商科大学教授の伊藤宏一さんは
「平成の最初のころの中高年からの相談では資金への危機感は薄く、生きがいや健康などへの関心が高かった。今では様変わりだ」
と振り返る。
引用:日経新聞より
70歳以上の高齢者、1世帯当たりの金融資産の平均額は過去20年で2000万円前後のまま横ばい状態を保っています。
しかし、長寿によって老後資金が底をつく「長生きリスク」は急速に高まっています。
1990年の90歳まで生きる人の割合は【男性12%、女性26%】でしたが、2017年にはそれぞれ26%、50%まで上昇している上、女性の7%は100歳まで生きるようになりました。
老後が長くなることを考えれば、1年当たりに切り崩せる金融資産が減ることは必然です。
年金財政の健全化のため、01年度から年金の支給開始年齢の60歳から65歳への段階的な引き上げが始まりました。
それだけでなく、すでにもらい始めている人の年金収入も、年金額に影響を与える賃金や物価が長く低迷したことなどから、緩やかな下降線をたどっています。厚生年金の平均月額(基礎年金など1階部分を含む)は、ピークの01年から17年にかけて14%減っています。
2000年代に入り、老年者控除など様々な税控除が縮小される一方、年金から天引きされる介護保険料、健康保険料は増加の一途にあるため、年金の手取り額はさらに減少しています。
夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯の00年と17年の毎月の赤字額を比較すると、約1万円から約5万4500円に大きくふくらんでいます。
90年当時、預貯金や債券の利回りは年6~7%前後あり、10年強預ければ元本が倍になりましたが、99年には日銀のゼロ金利導入で預貯金金利もほぼゼロ時代に突入しました。今後、十分な老後資金を蓄えるには株式や投資信託での長期投資も重要な選択肢となっています。
平成の初めにまだ6割だった60歳定年は98年に義務化され、06年には65歳までの継続雇用を原則的に義務づける法律が施行されました。ここ数年は嘱託などでの再雇用ではなく、定年を65歳に延ばす大企業も増え始めました。国家公務員も65歳定年に移行します。
企業年金も運用次第 老後資金づくり促せ
公的年金に上乗せされる企業年金も大きく変化しています。
かつては将来の年金額が決まっている確定給付型(DB)が主力でしたが、年金資産が不足すれば会社が穴埋めしなければならないため、2000年ごろから給付利率の引き下げや、終身年金から有期年金への転換が進みました。
給付額が細ったとはいえ有期年金が出ている間は家計収入は比較的潤沢で、使いすぎる人も一定数いるので、注意が必要です。
最大の変化は01年に導入された確定拠出年金(DC)です。会社が出す掛け金を、個人が預貯金や投資信託などで運用し、結果次第で年金額が増減するものです。会社は運用リスクを負いません。厚生労働省によると、企業年金のある企業の半数以上がDCを導入しています。
DCは従業員にも利点があります。運用時は非課税で、転職しても持ち越すことができます。DCの掛け金は個人の資産として管理されるため、10年の日本航空の経営破綻時にDBが大幅削減されたようなことも起きません。
問題は個人がDCを有効活用できていないことにあります。
DC資産の過半は預貯金などに眠り、通算利回りが「年1%未満」の人が最多となっています。アメリカでは「初期設定商品(デフォルト)」を投資信託とし、DC経由で半ば自動的に投信が買われており、高齢者の金融資産の急増の多くはDCでもたらされています。
投資教育だけで自主的な投資を促すのは限界があるため、日本でも米国のような誘導策が広がらないと、DCによる老後資金づくりがいつまでも進まない恐れがあります。