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家計は日本経済の縮図 守り固める現預金
もうすぐ平成が終わろうとしています。
バブル崩壊とその後の資産デフレ、少子高齢化の進行など、経済・社会情勢の激変に直面した30年間、家計はどのように遷移してきたのか。データを基に振り返りました。
内閣府の「国民経済計算」によると、家計部門の主な資産は1990年の約2654兆円から2015年は約2799兆円に増えました。1世帯当たりで見ると、核家族化で世帯数が31%増加したため、6525万円から5248万円へと縮小しています。
変化したのは資産の内訳で、「土地から現金」へのシフトが鮮明になりました。90年は土地が56%、現預金が18%でしたが、地価下落で土地の比率が下がり続ける中、現預金は上昇を続けました。2004年には両者が逆転。前年にりそな銀行が実質国有化されるなど、金融機関の不良債権処理が大詰めを迎えていた時期です。家計は現預金を積み増し続け、15年には33%に達しました。
家計の金融資産は2017年末に1800兆円超となり、平成の間にほぼ倍増しました。増加をけん引したのも現預金です。金利は90年代に低下を続け、2000年代に入るとほぼ消滅しましたが、他に有力な資産の振り向け先がないまま運用難の時代が始まりました。日本がデフレに突入した時期と重なっています。物価が下落し続けると、保有する現金の価値は相対的に高まります。
ただし、個別の家計からは別の事情も見えてきます。
日銀の資金循環統計によると、89年度に99兆円だった住宅ローン残高が、17年度には202兆円と倍増しているのです。
特に2010年以降、世帯主が30~40代の資産形成層の家計の住宅ローン残高の伸びが顕著になっています。家計の中で現預金と住宅ローン残高の増加が同時進行したことになるのです。
デフレ下では借金の負担が相対的に増すため、手元の現金を返済に回してローン残高を圧縮するのが正攻法です。
ですが、現実は異なり「預貯金を返済に回さず、手元に残した」(大和総研金融調査部の森駿介研究員)のです。要因の1つに、ローン残高に応じて所得税を減税する「住宅ローン減税」があげられます。森氏は「所得税の減税効果を享受できる間は、急いで返済する必要はないと判断した」とみています。
森氏によると「中古住宅市場が振るわないことも影響している」。中古住宅流通比率が高い欧米では病気や失業などに見舞われても、家の売却でローン返済や当面の生活費が確保しやすいのですが、日本は中古住宅流通が15%程度のため、中古住宅の価値が評価されにくく、いざお金が必要になっても希望通り売れるとは限らず、安全策として現預金に依存しやすくなるのです。
長寿化が進み、老後資金や年金不安から家計が前倒しで現預金を増やした側面もあるとされています。90年代後半以降、家計の可処分所得は減少傾向にあります。大和総研によると税・社会保険料負担の収入に対する比率は、平成の間に21%から26%に上昇しました。
家計は日本経済の縮図と言われますが、お金をためこむだけでは人生100年時代を乗り切ることはできません。長く、効率よく運用を続けられる「お金の働き方改革」が、次世代の課題となりそうです。