単身世帯の貯蓄ゼロは4割

給与随時払サービス「キュリカ」を運営するヒューマントラストは2017年にこのサービスを始め、現在の導入企業は100社で、利用者は11万人に達したといいます。このサービスが延びた一因として「貯蓄のない非正規雇用者が増えていることがあるのではないか」と阪本代表は推察しています。
日銀の異次元緩和が始まって6年目に突入しました。株価や不動産価格の上昇に比べて賃金は伸び悩んでいます。この間企業は景気の波に応じて雇用調整しやすい非正規社員を増やしてきました。非正規社員と正社員の賃金格差は依然として大きく、資産を持たない層は緩和の恩恵にあずかりにくい。金融広報中央委員会の調査によると、2017年の単身世帯の平均貯蓄額は942万円で、異次元緩和前の12年に比べて242万円増えてはいるが、単身世帯全体を貯蓄の残高順に並べた時、中央に位置する中央値世帯の貯蓄額は32万円で、5年前の100万円から大幅に減少しているのが現状です。これは金融資産がゼロの世帯が4割超と増えているためです。
フリマアプリ「メルカリ」で現金を額面を超える額で販売したとして逮捕者がでたニュースがありましたが、これは「超高金利での貸し出し」とみられています。その後もメルカリは現金出品を原則禁止しましたが、紙幣を加工した「オブジェ」などの出品が後を絶たず、これを多重債務者などのお金に困った人々が購入したとの見方がされています。
その一方、警視庁によると拾得物として届けられた現金は2016年に全国で177億円と、この10年間で3割ほど増加しています。「高齢者は銀行に行くのも大変で、金融機関が破綻した記憶も強いので手元に現金を置きたがる」と遺品整理のワンズライフの上野代表はいいます。
日銀は市中にお金を潤沢に流して景気を良くしようとしてきました。しかし家庭に貯めこまれ物価に影響しないまま、捨てられるケースも出てきています。「タンス預金は47兆円」第一生命経済研究所の熊野氏はそう試算しており、行き場をなくしたお金の膨張は、金融緩和が物価上昇に直結しない現実の一面を映しています。

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