単身高齢者、三大都市圏で1割超え

11月26日の日経新聞に掲載されていた記事を基に、老後破産がいかに身近になっているかを検証していきたいと思います。
高齢化が進んでいる地域は、どんどん過疎化が進んでしまいます。都心のワンルームのニーズは、今後は単身の高齢者からのニーズも増えていくかもしれません。

日本経済新聞社が国勢調査の結果を独自に分析したところ、大都市で1人暮らしの高齢者が急増している現実が鮮明に浮かび上がりました。
2000年以降の15年間で、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の単身高齢者数は2.1倍の289万人に達しました。2015年には、世帯全体の1割を突破しています。
単身高齢者は介護や生活保護が必要な状態に陥りやすく、社会保障の財政を圧迫する可能性が高いため、自立した生活を支える「地域包括ケアシステム」の構築が急務となります。
最新の15年国勢調査によると、65歳以上の単身者は00年比9割増の593万人でした。長寿化・未婚化が、00年時点の予測より5年ほど早い勢いで進んでおり、一般世帯に占める割合が11.1%に達しました。
日経新聞は単身高齢者の動向を探るため、全国1741市区町村のデータを独自に分析。
浮かんできたのは高齢化が先行した地方より、大都市での増え方が深刻になっている実態でした。
15年間で単身高齢者が2倍以上に増えた自治体は4割弱。三大都市圏を構成する関東1都3県、近畿2府1県、愛知県に集中していました。団塊世代が持ち家を求めた埼玉や千葉の郊外の多くは3倍強にまで膨らみました。三大都市圏の単身高齢世帯比率は10.9%と、4.8ポイント上昇しています。

実数で最も増えたのは横浜市で、2.3倍の17万1000人となりました。名古屋市は12万人に倍増し、東京23区全体は8割増の53万9000人となりました。いずれも単身高齢世帯比率は1割を超えています。三大都市圏で1割を超す自治体は11倍の221市区町村となり、全体の6割を占めました。
都市は地域で助け合う基盤が弱く、1人暮らしを支える自治体の負担は地方より重くなります。その傾向が顕著なのが大阪市。単身高齢者は05年に1割を超え、いまは最多の20万人強。大阪市の介護保険課は「単身高齢者の増加が介護給付費の上昇につながっている」と断言しました。
単身高齢者の17年の要介護認定率は36%で、同居人がいる場合の2倍強です。介護サービス利用率も8割と高く、18~20年度の介護保険料は月8000円弱で1000円以上高くなりました。横浜市も認定率に3倍近い開きがありました。
公共政策に詳しい一橋大の小塩隆士教授は「単身高齢世帯の1割超えは危険な兆候」と訴えます。単身高齢者は年金額が低い人が多く、生活保護の対象になりやすいなど、影響は社会保険にとどまらないからです。「対象は少数と想定した生活保護制度の財政基盤は脆弱」と語りました。
市町村決算や総務省のデータと重ねて分析すると、単身高齢者の増加は老人福祉費や生活保護費など扶助費の伸びと強い相関があり、自治体財政を圧迫していました。
大阪市は05年に財政改革を迫られ、人件費や公共投資のほか、新婚向け家賃補助や幼稚園の予算を削減しました。「高齢者への義務的支出は簡単に減らせず、財政の硬直化は進んでいる」(財源課)。支出に占める扶助費の割合は、当時の22%から18年度は32%に増えました。
国立社会保障・人口問題研究所によると、40年の単身高齢世帯比率は18%弱の見通しです。みずほ情報総研の藤森克彦主席研究員は都市での未婚率上昇により「単身高齢者の質が変わる」と見ています。「配偶者や子供がいない人が増え、想定以上に介護保険の需要が高まる」。
各市の介護保険事業計画をみると、特別養護老人ホームなど「ハコモノ」に重きを置く事例が目立ちますが、大型施設はサービスを効率化できる反面、建設や修繕の費用負担が重いことが問題です。都市部は適地も限られ、施設中心の政策は早晩行き詰まる可能性が高いため、在宅サービスにシフトする必要があります。
その柱が住み慣れた場所で介護、医療、生活支援を継ぎ目なく提供する地域包括ケアです。見守りや介護予防もまじえ、単身高齢者の自立を支えれば社会保障費の削減につながります。


千葉県柏市の豊四季台団地。単身高齢者の増加に危機感を抱いた市は、14年に見回りなどのサービス付き高齢者住宅に建て替え、医療・介護施設を集約しました。住民は訪問サービスを受け、入院しても再び自宅に戻ることができます。学童保育などで高齢者が働き、支え合う仕組みを取り入れました。埼玉県和光市は在宅型の介護予防や地域交流に注力し、要介護認定率を引き下げることに成功しました。
ただ、こうした成功例はまだまだ少なく、国は新たな定期巡回事業を介護保険に導入するなどして地域包括ケアを促していますが、使い勝手が悪く、浸透していません。

介護を社会で支えるために00年に創設した介護保険。負担軽減を狙い給付ルール改定を繰り返していますが、効果は薄く、むしろ利用者の実態からどんどんかけ離れていっているのが実態です。
国の推計では40年度の介護分野の社会保障費は18年度比2.4倍の26兆円に膨らむとされています。
国や自治体は単身高齢者の実態と向き合った地域包括ケアの仕組みを築かなければ、社会保障制度は漂流したまま持続性を失ってしまいます。

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