『マクロ経済スライド』発動 年金抑制の課題とは

老後破産 年金支給額

11月22日の日経新聞に、年金抑制策「マクロ経済スライド」に関する記事が掲載されていたので、ご紹介いたします。

厚生年金など公的年金の給付額を抑える「マクロ経済スライド」が2019年度に発動される見通しです。

【マクロ経済スライドとは】
日本の公的年金は、現役世代が払う保険料を高齢者に「仕送り」する構造で、物価と賃金の変化にあわせて毎年支給額を改定しています。
例えば賃金と物価が2%上昇すれば、年金額も本来は2%増えるのですが、労働力人口の減少や平均余命が伸びていることを加味して一定の調整率を定め、年金の伸び率を物価や賃金の伸び率以下に抑えるのがマクロ経済スライドです。調整率が1%なら、賃金や物価が2%上昇しても年金の伸びは1%に抑えられます。マクロ経済スライドには高齢世代の年金の伸びを抑えて、現役世代が将来受け取る年金が減りすぎないようにする狙いがあります。

マクロ経済スライドは2004年の年金改革の際に、少子高齢化に合わせて給付水準を自動的に抑える仕組みとして導入されましたが、デフレ時は適用しない制約があるため、これまで実際に機能したのは15年度だけでした。物価や賃金の上昇でようやく2度目の発動への条件が整いつつあるものの、世代間の公平性を高めるためには一段の改革が求められています。
18年度の厚生年金の標準的な支給額(夫婦2人分)は22万1277円、国民年金(1人分の満額)は6万4941円でした。19年度に高齢者が受け取る年金額は据え置きか微増にとどまる見通しとなっています。

今回対象となるのは15年度以降の3年間で、第一の条件となる消費者物価指数(CPI)をみると、10月の総合指数は前年同月を1.4%上回っています。18年通年でみても、1%を超える高水準になりそうです。もう1つの指標である賃金変動率がプラスになれば発動条件を満たし、物価の伸びと比べた3年間の実質の賃金変動率に基づいて判断していきます。
消費税増税の影響で実質的に賃金が減った14年度が計算対象から外れるため、全体の水準が押し上げられた形になりました。

年金制度の持続性を高めるには年金支給額が膨らみすぎないようにする必要がありますが、実際は高齢者への様々な配慮が施されています。
例えば仮にマクロ経済スライドを発動したとしても、見た目の給付額を前年より減らさない「名目下限措置」というルールがあり、上限まで調整が働いても年金額は据え置きになるのです。
厚生労働省は原則65歳の支給開始年齢を引き上げなくてもマクロ経済スライドによる調整で年金財政の健全性を保てるとの立場ですが、実際は十分に機能しているとは言えません。効果を少しでも引き出そうと、18年度からは調整しきれなかった分を翌年度以降に繰り越す仕組みを導入しました。物価や賃金が大幅に上がった時に未調整分をまとめて差し引く考え方だが、そもそも抑制策が発動しにくく、繰り越し分が溜まり続けてしまいます。

年金制度の課題は多く、日本総合研究所の西沢主席研究員は「名目下限措置は撤廃すべきだ」と訴えています。物価や賃金の動きにかかわらず抑制策が働くようにすべきだとの意見も根強く、会計検査院によるマクロ経済スライドが導入された04年度から毎年発動したと仮定した試算によると、国の負担が累計3.3兆円削減できたという結果が出ており、「適切な給付水準の調整が重要だ」と指摘しています。

これまでも、年金は常に政治の争点となってきました。
マクロ経済スライドが発動しにくいのも高齢者に配慮する力学が強いためで、過去のデフレ局面では本来下げるべき給付額を政治主導で維持する特例措置がとられたこともありました。19年10月の消費税増税の反動減対策に政界の関心が集まる中、高齢世代の反発を招きかねないマクロ経済スライドの発動が新たな争点となる可能性があります。

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